京都に見る表計算ソフト的発想

京都に見る表計算ソフト的発想

jinbutsu藤村正弘氏(中小企業診断士)

私の地元京都には、独特の住所表示方法がある。表計算ソフトExcelにも通じるその発想とは・・・

■住所表示が持つ意味とは

京都を本拠とする株式会社京都銀行本店の住所は、そのホームページによると、「京都市下京区烏丸通り松原上る薬師前町700番地」と表記されている。 その意味は、建物が南北に走る烏丸(からすま)通りに面していて、交差する東西の松原(まつばら)通りから上がる(北へ行く)と到着することを示す(図1)。

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まったく行ったことのない場所でも、通り名(“とおりな”と呼ぶ)を知っていれば住所を聞いただけで行けるという、京都人にはなじみの深いしくみだ。

通り名がわかるというのが大前提なので、「まるたけえびすに、おしおいけ・・・」という京都人のソウルソングがある。北から、丸太町、竹屋町、夷川、二条、押小路、御池・・・という通り名の略称だ。

http://www.city.kyoto.jp/koho/kids/07_street/

もっとも、近年、郵便局では宛名に町名と番地のみを書くことを要請しており、新聞記事も町名のみの表記(下京区薬師前町700番地)になりつつあると聞く。 しかし薬師前町と言われてその場所が思い浮かぶ京都人はまずいないだろう。

■住所の決め方とは

具体的な住所の決め方は次のようになる。
①まず目的地が面している通り名を書く
②その通りに交差している最も近い通り名を書く
③交差している②の通り名から見て、目的地が北方向なら「上る(あがる)」、南方向なら「下る(さがる)」、東方向なら「東入ル(ひがしいる)」、西方向なら「西入る(にしいる)」を付記する。
①②③のステップで簡単に住所が特定できるという仕組みだ。

これはご存知のとおり、Excelのセル表示でC6だと3列6行目とわかるのと同じ理屈で、カーナビやスマホアプリがなかった時代には本当に便利な表記だったろう。

Excelと違うのは、セルではなく罫線の方を指定することだが、これは歩行者が罫線(通り)を歩くことを考えれば当然といえる。

海外の同じく碁盤目状の都市、例えばニューヨークでも似たような考え方があり、59番通り100番地などとデジタル的に表記するようだが、京都では綾小路(あやのこうじ)とか釜座(かまんざ)とか、どこか情緒のある名前がつくのが面白いところだ。

■さらに高度な住所表示方法とは

実は応用編がある。下図のような通り名のない小路や行き止まりの路地の場合も、驚くべき表記方法が用意されている。

 

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(図2)

表記方法:青通り赤(通り)上ル東入る

訪問者はまず青通りを北進し、赤通りを通り過ぎたところで、小路を発見し、右(東)へ曲がると到着する。

(図3)

では無名の小路が2つあったらどうするのか。

表記方法:青通り赤(通り)上ル2筋目東入る

訪問者は同様に青通りを北進し、赤通りを通り過ぎたところで、二つ目の小路を発見し、右(東)へ曲がると到着する。

これらは、いわばExcelのセルをさらに分割して表示するイメージだ。

■駅名の不思議

もっとも便利で良いことばかりというわけではなく、次のような混乱現象も起きている。

京都の中心地四条烏丸では、同じ場所にある電車駅なのに、阪急は「烏丸」駅、市営地下鉄は「四条」駅と命名されているのだ(図4)。

 

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阪急は東西方向の四条通に沿って走っているので、交差する烏丸という通り名を、一方の地下鉄は南北方向の烏丸通りを通っているので、交差する四条という通り名を駅名称にしたというわけだ。

聞けばそれなりにスジは通っているが、Excelでいえば、C列3行目を阪急は「C列目」駅と呼び、地下鉄は「3行目」駅と呼ぶパターンであり、他府県の方には極めて分かりにくい。

さらに、南北方向川端通りを走る京阪電車は川端四条にある駅を「四条」と称していたが(今は祇園四条に改称)、上記の地下鉄「四条」駅から1km以上離れている。

こちらはExcelでいえば、C列3行目とF列3行目をともに「3行目」駅と命名するパターンだ。

それにしても、おそらく江戸時代以前からあったであろう先人の知恵が、Excel的発想に通じるものがあると考えたとき、ある種の感慨を覚える。

次の休みには京都に来て見ませんか。まだまだ奥深い発見があるかも。

 

プロフィール

1954年 京都市生まれ
株式会社ブリヂストンを経て、現在上場会社で経理財務を中心に従事
「人・財(じん・ざい)マネジメントで組織活性化」をコンセプトに2014年秋 事務所開設予定

中小企業診断士、社会保険労務士、第1種衛生管理者、1級ファイナンシャルプランニング技能士(CFP)
著書 「中小企業のITはこう使え!」 2014年デザインエッグ社刊 (共著)